ぽすぽす田舎

おもに化学やってる大学院生。 思ったこと気付いたこと忘れそうなこと楽しかったこと。 いろいろつれづれに書いていきます。

実験計画とやらを立てましょう

 

本日6月6日は韓国の祝日でござーい

てことで昨夜はマトリックスをビールとともに鑑賞し、今日は引きこもってエクスペンダブルズ鑑賞してたよーい

 

明日は未明から反応を仕込まなければならないので寝なきゃなーと思っていたら

よくよく考えたら塩基最適化したら反応時間半分になったから明日じゃなくていいや

ってことになったので計画立て直して今に至りまする。

 

さてみなさんは実験計画立ててますか?

学部生や修士学生はそんなに立てる方はいないんじゃないでしょうか?

これは自分の経験と偏見ですが。

学部生、修士学生だと研究の方向、つまりこの結果が出たから次は何をすべきかってことを先輩とかスタッフの方たちとディスカッションして、必要な試薬探したり乾燥させたり論文検索したり器具を把握したり、してからの仕込みだと思います。

 

つまりは結果が出てから次の仕込みを決めるまでにディスカッションが必要なので計画を立てにくく、さらに計画立てても思い通りに結果が出なかった場合には計画すべてが御破算になるので意味ない場合も多いかと思います。

なので自分の時には計画立てる時間があったら仕込むぜベイビー!!
ってことで計画なんて立ててませんでした。。。

ただ修士1年の時、計画立てないで頭の中でやることとやる順番を常に反芻してたら、まじで頭が回らなくなって微熱とともに気持ち悪くなったことがあります。

これにはびびりました。

 

いきなり横道それましたが、計画立てるのって研究には重要なのです。

特に留学のように時間が決まっている場合には特に。

計画を立てることによる利点ですが、以下の3点が大きいかと思います

  1. 課題終了日が分かる

  2. 自分の研究を語る上で最低限必要な実験データと+αでやるとよいことが把握できる

  3. 予想しないことが起きた場合でも冷静に対処できる

 

1の課題終了日が分かるからなんなんだよって思う方もいると思いますが、これ重要ですよ

計画の上で期間内に終わらなかったら確実に終わりません。

根性でどーにかなるものとならないものがあります

時間てのは無情なものです

なので決められた期間内で結果を出すためには終了予定日を把握する必要があります。

実際社会で期間内に終わらなかったらプロジェクト破綻です。

1日につき人件費やら光熱費がかかるわけで、1日オーバーでも予算オーバーになりプロジェクトから手を引いた方が企業にとって利益になる場合もあります。

 

2の自分の研究を語る上で最低限必要な実験データと+αでやるとよいことが把握できるってのも重要ですね

いくら最初に道筋を考えていても、自分の研究を語る上でこの切り口(イントロダクション)がもっともよいものか考えることは重要です。

1つ基質を変えるだけで実は研究の重要度が増す場合もあります。

なので絶えず切り口を考え、それに応じたデータをそろえることが大切です。

切り口と全く関係ないデータ出したら。。。まぁおもしろい結果が出ればいいですがそうでない場合には試薬と時間と体力の無駄になりますね。

 

 3の予想しないことが起きた場合でも冷静に対処できるという点についてですが、これは2でも述べた研究の切り口について絶えず考えていれば得られるものです。

常に最適な切り口を考えていれば、予想に反しているその結果が研究全体をひっくり返すものなのか、はたまた研究の質を若干上下させるだけのものなのか判断できます。

したがって論文書く際にはその重要度によって結果を載せないという判断もできますし、逆手にとってそれを研究の強みにできる場合もあります。

 

とまぁ偏見というか自分の考えですが、計画を立てて得られる利点とはこんなもんでしょうか。

んではいつどーやって計画立てたらよかんべかってことで書いてみようかと思います。

 

とりあえず計画の立てやすい触媒を使った研究における計画の立て方を考えてみようかと思います。

ちょいとプロジェクトマネジメントの概念が入ってきますので、のちほどネットで調べてみてください。

 

まず計画を立てるにはWBSを作成することがひっじょーに大切です。

WBSとは簡単に言うとto doリストですな

なにをしなければならないか。やることリストです。

ただこのリストですが、大きなタスクを書き出し、それぞれを時間を割り当てられる単位まで分解しましょう。

例えば「Work up」という大きなタスクを書き出し、これを「分液」「エバポ」「カラム」「エバポ」とかに分解します。

ただこれは自分が必要とする計画の大きさに合わせていいかと思います。

1日の計画を立てるならこれくらい細かく分けなければなりませんが、1か月単位なら「Work up」というタスクに「4時間」と時間を割り当てればいいかなと思います。

そーすれば1日の中でどれくらいWork upに時間を使わなければならないか分かります。

触媒を用いた反応開発では以下のようにタスクが分けられると思います。

「触媒探索」「溶媒最適化」「添加剤最適化」「基質スクリーニング」「反応機構考察」などですかね。

不均一触媒ならばここに「再利用性の検討」とか「リーチングテスト」を入れてもいいと思います。

そしてこれらを分解します。

「触媒探索」について丁寧にやると以下のようになります

1.0.0. 触媒探索

   1.1.0. 触媒候補の調査

      1.1.1. 触媒反応の調査

          1.1.1.1. 比較する市販の触媒の調査

          1.1.1.2. 反応条件の調査

          1.1.1.3. 単離方法の調査

          1.1.1.4. 収率出し方の調査

      1.1.2. 合成法の調査

      1.1.3. 必要な試薬の調査

   1.2.0. 触媒合成

      1.2.1. 試薬注文

      1.2.2. 触媒合成

      1.2.3. 活性確認

   1.3.0. 反応検討

      1.3.1. 使用する基質、溶媒、添加物の決定

      1.3.2. 反応

      1.3.3. 収率出し

 

ここで同じレベルのタスクは同じ大きさにすることが重要です。

例えば1.1.1.とか1.1.2.とか1.3.1.のレベルは同じ大きさになり、この段階が律速段階になっています。

つまり計画の進行度を把握するにはこのレベルのタスクがどれくらい進んでいるか確認すればいいわけです。

 

そしてこれらのタスクに時間を割り振ります。

実際のプロジェクトマネジメントでは資源(予算とか人手とか)も割り当てるんですが、ここではあまり意味もないと思うので割愛です。

 

時間を割り振ったらガントチャートに起こします。

ガントチャートはガントさんが作ったチャートです。

見たことある方も多いと思いますが、表みたいなやつです。

縦軸にタスクを書いていき、横軸に時間をとり、1.2.1とか1.1.1.とかのタスクに必要な日数だけ矢印を延ばせばOKです。

案外簡単でしょ?

詳しいガントチャートの作り方についてはネットにいろいろ載ってるんで調べてみてくださいな

ガントチャートができたら。。。おわり?

いえいえそんなことはありません

あとは「バッファの最適化」が残っています

 

例えばGC Yield出してWork upしてカラムかけてNMRとって。。。

という一連の仕事をする際にどう時間を割り当てますか?

GC Yieldに40分、Work upに30分、カラムに2時間、NMRに30分と割り当てたとしましょう。

NMRのあとには重要な教授とのディスカッションが待っているとします。

しかしそこには予想できない出来事もあるでしょう

GCは置いといて、Work upでエマっちゃってどーにも分かれん困った。

試行錯誤。終わった!。。。時間過ぎてる!やばい!

ええいカラムの時間を短縮すればよいだけの話!

。。。。。。。ああああああカラムおわんねーNMRとれねぇぇぇぇ

ってこともあるでしょう

そういう経験から人は余裕をもって計画を立てるようになります。

GC Yieldに40分、Work upに30分、、、いや50分とっておこう。

カラムに2時間、、、一応3時間てことで。

NMRに30分、、、ずれこむから1時間とはばとって予約しとこ。

とかとか。

そーした場合、実際うまくいくとNMR測定予定時間のはるか前に精製が終わり、測定までの時間ひまだなぁってことになりかねません。

これは1日の中でのできごとなので影響はそれほどでもないですが、月単位や数カ月単位で予定を組んだ時には無駄な時間が多く出てしまいます。

ではどーしたらいいか。

ここで出てくるのがクリティカルチェーンマネジメントで重要なプロジェクトバッファの0.5倍則です。

余裕をもって計画を立てて結果として無駄な時間ができてしまうのは、個々のタスクにバッファ(余裕)を持たせているためです。

そのため最終的に融通がきかなくなります。

なので効果的なバッファの設定法として、個々のバッファをタスクの最後に回し、そのバッファの和を0.5倍にするという方法です。

ここでは

 

GC Yieldに40分

Work upに30分+20分 = 50分

カラムに2時間+1時間 = 3時間

NMRに30分+30分 = 1時間

 

と設定していましたが、これは

 

GC Yieldに40分

Work upに30分

カラムに2時間

NMRに30分

バッファ総和1時間50分

 

と解釈できます。

なので

バッファを半分ということで55分に設定し、これをタスクの最後におきます。

すると

 

GC Yieldに40分

Work upに30分

カラムに2時間

NMRに30分

バッファ総和55分

 

となり、予定どうりに終わっても55分の暇で済みます。

約1時間の短縮ですね。

これ1日単位ではなかなか大きいと思います。

こんな感じで各タスクには必要最低限の時間を割り当て、各タスクのバッファの総和を最後に持ってきて0.5倍すればいい感じに余裕持って終われるでしょう。

クリティカルチェーンマネジメントに関する合流バッファやプロジェクトバッファについてはこんなWebページがあったので紹介しておきます。

http://www.pcmi.jp/html/toc_ccpm/TOC_index6.htm

 

 

さてこんな感じで計画の策定は終わりです。

ただし計画は作って終わりではありません

絶えず進捗の確認と計画の練り直しが必要です

 反応時間が予想より長かった

 予定していた基質だけでは充分と言えない

 意外と触媒の選択性が悪かった

などなど予想に反した結果が出てくるのが化学です。

なので結果に応じて計画を練り直し、終了日がいつになるかを把握していることが大切ですね。

 

 

とりあえずこんなところでしょうか

興味のあるかたはプロジェクトマネジメントを学んでみてもよいかもしれません

プロジェクトをいかにマネジメントし、予算内で確実に遂行するかを学べます

よかったらググってみてください