ぽすぽす田舎

おもに化学やってる大学院生。 思ったこと気付いたこと忘れそうなこと楽しかったこと。 いろいろつれづれに書いていきます。

留学で学んだことをば_その2. テーマの選び方

 

韓国留学きて早2か月。

つまり残り1か月。

そろそろ論文を書き始めました。

出すところは決めてませんがとりあえず研究をまとめることのついでに流れを作っておこうと。

そこで気付いたのがテーマの設定の仕方。

3か月とか短期の留学で論文書くまでまとめ上げるのは普通は無理でしょう。

俺の場合運がよかったですな。

 

でもこれを運がいいというだけで終わらせてしまっては学ぶことは少ない。

なぜ運がよかったのか。

テーマを選ぶにはどう考えたらいいか。

すこし考えてみたので備忘録も兼ねて書いてみようと思います。

 

まずは序から。前置き書かせていただきます。

言うまでもなく論文やら発表やらする時に何が重要かってそれは物語です。

いかに論理立てて、なにが重要と考えられているのか、なにが問題点またはなにに着目して改良すればよりよい結果が得られるのか、そしてそのためになにをしようとするのか。

これらを簡潔に語ることです。

このへんのは留学前にやっておけるでしょう。

てかそれやらないと留学先で何を達成したくてなんでこの研究室選んだのってことになります。

 

しかし物語の大筋を考えていても短期留学です。

実験がうまくいかないこともあれもありますし、実験開始までに時間もかかります。

実験開始までには早くても2週間。

これには手続きやら器具集めやら試薬の純度確認やら試薬発注やらのため、これを短縮するのは無理です。

そして信頼性のある実験を行えるまでに2週間以上はかかるでしょう。

自分の場合、嫌気性条件下での実験というのはまさにお手の物でしたので特に技術的に困ることはなく、器具、装置の信頼性を確かめるだけで済みました。

その俺で2週間、つまり最初の1か月は信頼性のある実験ができないということになります。

つまり残り2か月。

この時間で何ができるか。

留学に際しての目標は以下の2つにわかれるかなと思います。

 

1. 結果を出し、論文書いて博士論文に入れる内容にする。(自分はこれ)

2. 異種分野(理論計算化学から全合成化学とか)にとびこみ、化学者としての価値を高める。

 

ほかにもあるかもですが、、、思いつかないのでこれらだけにしときます。

 

2の場合は特に考えることもないでしょう。

全てが経験したことないんですから、なにをやっても自分の技術向上になります。

でも本当になにも考えずにやっていたら帰ってきてからあまりの経験したことの少なさにびっくりするでしょう。

したがってこの場合は1週間単位、または2日単位くらいで目標を作り、細かく達成していくことが大切と思います。

なのでテーマをどうこうと言うよりは留学中に技術習得についてつねに考えていることが重要になりますね。

 

では1について。

先ほども述べましたが残り2か月です。

2か月といってもその間にセミナー資料作成やら試薬の精製やら、もちろん思うように行く保証もなく路線変更を余儀なくされることもあるでしょう。

さらに反応時間の問題もあります。

1つの反応に2日かかるとしたら1週間に丁寧にやったら3つ、または4つというところでしょうか。

2か月だと32個です。

この数で論文を書くわけです。

留学中に論文を書くのに充分なデータを得ることがいかにむずかしいか分かりますかね。

まぁ論文書かないで、思う存分実験楽しんでいろいろ試すのもありだと思います。

自分のアイデァを海外の研究室で試して新たな芽がでたら楽しいでしょうし。

 

さてここで本題。

いかに論文を書きやすいテーマを選ぶか。

簡単で結果の出やすいテーマ選べばいいんじゃね?
なんか志の低い言葉になってしまいますが大筋はこんな感じです。

「簡単で結果の出やすいテーマ」と一言にいってもいろいろあります。

着眼点が素晴らしく、このひと工夫で劇的な効果が予測されるもの。

これはまさしく簡単で結果が出やすいですな。

でもそんなものばかりではありません。

かといって志の低い、はっきり言ってしまえば化学界への貢献が少ない研究を行うために留学してもどうしようもありません。

得るものも少ないでしょうし、留学がもったいないです。

そこで自分の提案は、留学先の研究室が持っているオリジナルの研究(触媒や配位子など)を利用し、既知のものをなぞらえてやってみようというものです。

なぞらえてと言っても全く同じではありません。

そこには当たり前ですがオリジナリティーが必要です。

より温和な条件で反応を進行させる。

不均一触媒で進行させることで精製法および触媒回収能を向上させる。

とかとか。

月並みですがこんなやつ。

このような研究の場合、その研究室ですでに長らく研究されているものを使う訳ですからノウハウはもちろんあり、信頼性のあるデータを得やすいです。

さらに銅鉄主義ではありませんが、少しずつ細かいところを変化させた研究はそれだけではインパクトは少ないですが過去の成果とまとめて考察すると基礎化学的に重要な知見、傾向が見えてくる場合もあります。

つまりインパクトちいせぇと馬鹿にすることなかれ。

大きな知見は小さい研究の積み重ねであります。

 

そしてこの考え方、結構重要だと自分は思っています。

 

な ぜ か

 

慣れない研究室で短期間で結果をあげることはポスドクになった場合やアカデミックスタッフとして雇用された場合に必要な技術になるからです。

例えば4月に赴任して、先に述べたように1か月はまともな実験ができないでしょう。

またスタッフならば書類下記やら学生実験の手伝い、研究室の雑用など実験に使える時間はかなり限られてきます。

すると1か月半、2か月で信頼性のあるデータが得られ始めるというところでしょうか。

当然測定機器も使い方を学び、試薬もなんやかんややり、なかなか軌道に乗らないでしょう。

あっというまに3か月、4か月が過ぎていきます。

しかし最初の6か月中に論文を1報書けるくらいにしておかなければなりません。

でなければ1年目の成果無しになってしまいます。

任期付スタッフなんてあたりまえな世の中。

その中1年目に成果ゼロは厳しいでしょう。

そこで重要なのがやはり先も述べた、その研究室で長らくやられているオリジナルなものを用いて既知のものをなぞらえると言うもの。

信頼性のあるデータも得やすく、インパクトは小さいかもしれないが一つの成果となりやすい研究です。

この内容で6か月のうちにまとめておけば出して返ってきて書きなおしていろいろやっても1年目が終わるころには何とか出るでしょう。

 

つーまーり

うまく言いたいことをまとめられていませんが、

留学やポスドクなど慣れない研究室にて成果を出すためには、その研究室で長らくやられているオリジナルのものを用い、既知反応をなぞらえてみるテーマというのも重要なのではないか、ということです。

 

以上、お送りしました。